音声ガイドとは?

「目で見る」という視覚情報がない場合、映像メディアをどう楽しめばいいのでしょう?
映像が伝える視覚情報は、字幕文字の他、情景や景色、人物の動きや表情、場所や時間の移り変わりなど、多岐にわたります。けれども、聴力によって、セリフやその他の音声情報を聞き分ければ視覚情報をカバーすることができます。
私たちは、このように映像を音声でイメージしている視覚障碍者に対して、セリフの合間や場面転換など、映像本来が持つ音声の隙間に、視覚情報を「言葉」に置き換えて解説するナレーションを付加します。この映像の鑑賞補助ツールが『音声ガイド』です。
テレビ等、家庭でみる映像メディアでは、副音声への切り替え一つで、スピーカーから聴くことができ、ホールや劇場等、複数の人が同時にみる映画等の場合は、FMや赤外線の電波送信で、聴きたい人だけが受信端末のイヤフォンから聴くことができます。
使いやすく、わかりやすく
私たちは、バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツでの5年に渡る活動を通して、視覚障碍者と共に音声ガイドの研究・制作を行ってきました。
音声ガイドは、脚本のト書きに似た解説ですが、それだけでは十分ではありません。「音声のみ」で映像をイメージするためにはどうしたらよいかを、よく知っていなければなりません。例えば、「音やセリフでイメージできるものについては、あまり説明しすぎない。」「同音異義語や聞き慣れない言葉は使わない。」「具体的かつ客観的な表現を心がけ、解釈を押しつけない。」等々です。
映像の見方をよく理解していることも重要です。映像メディア特有の編集効果やカメラ演出は、すべて何らかの意図があって行われています。私たちは、それらの効果も言葉のテンポ、つなげ方、止め方などを工夫することによって、表現しています。さらにCAPでは、音声ガイドがユニバーサルデザインな映像鑑賞補助ツールとして、目の見える方々にも利用されることを目指します。
さまざなメディアへの普及をめざして
デジタル技術の進展で、どの映像メディアでも音声ガイドを付加することは、可能な時代となりました。今後音声ガイドが、家庭での一家団欒の場や、劇場などのコミュニティ空間において、幅広く利用されることを期待します。
それは、視覚障碍者の社会参加と生活の質(QOL)の向上に役立つだけでなく、その周囲にいる健常者にも、楽しみや感動を共にできる喜びをもたらし、皆の幸せにつながるからです。
まず、原稿
欧米では音声ガイドのことを、“Audio Description(オーディオ ディスクリプション) ”と言い、音声ガイドの原稿(台本)を書きあげるライターのことを“Describer(ディスクライバー)”と呼びます。CAPでは、視覚障碍者との関わりをもち、経験を積んだ “ディスクライバー”たちが、音声ガイドを制作しています。
必要な材料
音声ガイドの原稿制作には、言うまでもなくガイドをつける映像ソフトが必要です。また、資料としてシナリオの他、原作本、その他、映像作品に関連する様々な資料を使います。シナリオには、人物や土地の名称などがきちんと書かれており、ト書き部分も音声ガイドをつくる上で非常に役立ちます。
スタッフの決定
一番はじめに、制作コーディネーターが映像の内容をチェックして、スケジュールとスタッフを決めます。ここで、スタッフとして作品にあったディスクライバー、監修者、視覚障碍者モニターが選ばれます。
原稿書き
音声ガイドをどのタイミングで挿入するかは、セリフや音ではかる箇所と、画像ではかる箇所があります。まず、このタイミングをわかりやすくするため、ディスクライバーは、セリフや画をテキスト化します。そのうえで、何度も何度もくり返し映像をみながら音声ガイドを推敲し、ガイド原稿を書きあげていきます。映像を言葉に置き換えて文章化する作業と、その解説文をセリフのすき間の短い時間に納める作業には、かなりの労力を要します。
監修
1人で映像を見ていると、勝手な思い込みで、事実とは異なった解釈をしてしまうことがあります。そこで、ディスクライバーがつくった原稿は、監修者によって、客観的かつ適切な見方がされているか、演出の意図をきちんと捕らえているか、チェックされます。監修者は、経験をつんだディスクライバーや監督、脚本家などの専門家の方々が行います。
モニターチェック
さらに視覚障碍者モニターがチェックします。モニターには、中途視覚障害者、先天性視覚障害者、弱視者などの様々な立場の視覚障碍者が参加し、全般にわかりやすく、イメージしやすい表現になっているかを検討します。経験を積んだディスクライバーであっても、作品によって説明する内容が異なるため、モニターチェックは欠かせません。こうして、ユーザーのニーズに合ったガイド原稿が出来上がるのです。
ナレーション収録
できあがった原稿はナレーターに渡されます。ナレーターは映像をみながら、原稿に書き込まれたタイミング通りに、音声ガイドを当て読みしていきます。収録はスタジオにて、1日を要します。
編集
ナレーションの音声データは、さらにノイズカット、レベル補正、音声ガイドのタイミング調整等、細かい編集作業を経て完成します。日本映画の場合、約30時間を要します。
フィルムとの同期
上映の際には、映像フィルムと音声ガイドを同期させる作業が必要です。フィルムと音声ガイドは別々の機器で再生されますが、フィルムを再生する映写機の回転速度は、常に一定ではありません。特に古い映画フィルムですと、劣化によるコマ落ちもひどく、映像が数コマ飛んでしまうこともあります。このため、フィルム映像と音声ガイドの同期は、「人間が生でナレーションするしかない。」とされてきました。
しかしCAPでは、オペレーターがフィルムと音声ガイドの微妙な速度調整を行うことにより、録音データを使用した同期再生が可能です。ですから、生のナレーションで心配されていた、読み間違えやガイドの遅れなどもなく、安心して音声ガイド付きの上映会が行えます。
出力形式と送信
会場全体で音声ガイドを聴く場合には、音声ガイドを映画本編の音声と共に、会場のスピーカーから流します。一方、音声ガイドを聴きたい方にのみ、お聴きいただく場合は、FM微弱電波や赤外線電波などを客席に飛ばし、受信機のイヤフォンからお聴きいただく環境をつくります。赤外線電波ですと特殊な受信機が必要ですが、FM電波であれば通常のラジオが使えます。















